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といった場所を常時映すのですが、人目につかない壊れた個々の家の中を点検をしていくというようなボランティア活動も熱心に行われ、この活動は強力でした。
このようなことをいろいろ考えますと、上意下達というようなボランティア社会は私たちの目指す方向ではないかもしれません。今後の考えなければならない課題だと思います。
20世紀に発達してきた行政、企業システムに制度疲労が起きてきて、それを補うものがボランティアであるとするなら、私たちはそういうものの補完的なものよりももっと自主的なものが必要であり、補完をしていくボランティア社会では、欧米の第3の社会システムのようなボランティア社会にはなりえないのではないかと思います。それはごく限られた方になってきて、もう誰でも何処でもというものにはならないのではと患います。
なぜこのことを長々と申し上げたかと言いますと、95年、日本もボランティア団体が簡単に法人化でき、個人や法人の寄付金は所得から控除され、税金は安くなる「NPO法案」を作るときに、最も対立したのが今の2つの考えなのです。ボランティア団体の自主性を重んじ、団体の運営上からも人材の確保や寄付金の取扱いには法人化した方がいいわけですが、法人活動を自由に行うことについていやそうじゃないんだという考え方も依然強く有り、対立は未だ続いています。日本にもボランティア団体はたくさんあります。今日も多くの公益法人の方が参加されておられますけれども、公益法人は営利を目的としない法人ですので、そこでボランティア活動しておられるわけです。ただ日本の社会のあり方かもしれませんが、公益法人は監督官庁が許可をしなければならないということになっており、その許可もなかなかおりません。社団法人なら1億円程の事業をするものを認可します。その他事業活動の予算書提出が必要で、財団法人なら3億円程の予算書を提出しなくてはなりません。これは民間では簡単にできるわけがありません。また公益法人には社会福祉法人、教育法人等がありますが、普通私たちが何か人助けみたいなものをやりたいので法人化をしたいというような場合は、ほとんど許可されないというのが現状です。
また、厚生省や大蔵省といった各省庁が、監督官庁として許可を出すわけですが、監督官庁の基準(かなり厳しいチェック)に叶わないと公益法人になれないのです。自主的活動とは言いながらなかなか難しく、そこに1つの分枝点があります。その残骸を少し残すのか、ほとんど取り払うのかということで非常に大きな差があります。

 

●行政とボランティアの役割分担

 

ただ、行政とボランティアの役割分担というものもあります。例えば阪神・淡路大震災直後に被災地に行って、瓦礫を掘る、傾いた建物を直す、水を運ぶ等のボランティア活動をしましたが、それをいつまでやるかということになりますと、ボランティアの人だけに期待するわけにはいかないのも事実です。
一定の限度では、個人の生活を根本から壊されたわけですから、それを保障して

 

 

 

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